カーテンコールは終わらない

いつか動かなくなる時まで遊んでね

エーステに関するエトセトラ。

これはMANKAI STAGE『A3!』 ~SPRING & SUMMER 2018~東京凱旋公演が始まる前日、10月25日にふせったーに書いたエーステに関するあれこれを少し加筆修正したものです。
お友だちになんでふせったーに書いたの?って聞かれて確かに……ってなったので、こっちでも纏めておきます。



『完璧じゃなくても、最高の芝居はできる、』

監督のことばを受けて、確かめるようにこのことばを口にした皇天馬くんがあまりにもきれいで。
この作品を、舞台という"なまもの"として表現することに、わたしはあまりにもしっくりきてしまって。間違いなく、舞台でやることに意味があるのだと。


6月28日(木)から幕を開けた、MANKAI STAGE『A3!』 ~SPRING & SUMMER 2018~を観劇して、はっぴ~~すぎて気が狂ってしまったのですが、ようやく明日10/26(金)から東京凱旋公演が始まるので明日気が狂ってしんでしまっても良いように(良くはない)エーステに関するエトセトラを残しておきたい!

そもそもわたしは普段若手俳優さんのおたくをしているのですが、本命の推しはエーステには出ていません。そして昔から基本的にあんまり漫画だとかゲームだとかには進んで手を出さない方です。初めて読んだ少年漫画は、大学生になってから突然はまったHUNTER×HUNTERだったりします。

なのに何故だかアプリ配信開始日からいそいそと続けていたA3!が舞台化すると発表があり、これまでにないくらい気合い入れてチケ取りに挑みました。推し出てないのに。
昨今の2.5次元ブームにはわたし自身もいろいろと揉みくちゃにされてきたので、何でもかんでも舞台化するこの流れが好ましく思われていないことも分かっています。数が増えれば増えるほど、淘汰されて今後いいものだけが残っていくとは思っているけれど、いま溢れかえる"2.5次元"というジャンルにおけるクオリティの落差が凄いことも身をもって存じ上げています。実際いわゆる「虚無舞台」ってやつにもいっぱい出会ってきました。

元々このA3!というコンテンツは絶対に舞台化する、というかそもそもこのご時世、ある程度は舞台化を前提としてつくられたコンテンツなんだろうなと感じていたので舞台化自体には全然驚かなかったし、キャスト発表があってからむしろA3!舞台化を誰よりも楽しみにしていたのってわたしじゃない!?ってくらい、3次元のMANKAIカンパニーと出会う日がたのしみでたのしみで仕方なかった!

若手俳優の推しはエーステには出ないけれど、推しが出てしまうとどうしても邪な気持ちと言いますか、やっぱりキャラクター<推しになってしまうところがあるので、そこを踏まえてもエーステのキャストが出たときほっとしたし(そもそも推しがやるようなキャラクターがいるかと言われれば微妙なので全然心配はしていなかったけれど)A3!では夏組箱推しの三好一成さん最推しなのですが、公式メルマガで「三好一成:赤澤燈」の文字列をみたときは仕事終わりの電車の中で思わずガッツポーズしました。公式との解釈一致。


エーステが始まる一週間ほど前、母にエーステの話をしたときに「誰を観に行くの?」って聞かれてびっくりしたことを思い出します。
この「誰を観に行くの?」という質問の答えは、わたしの場合三好一成さんあるいは夏組、または大きく広げるとMANKAIカンパニーにあたるんだろうなと。

先に言ったように、もともと2次元のコンテンツを自分から進んで享受してきたことってあまりないんです。だから推しが2.5次元作品に出る!ってなって、原作の漫画を読んだりはしたしそれで原作にはまった作品もいっぱいあるけど、自分がもともと原作が好きで舞台を観に行くのって全然モチベーションが違う。あとわたしがあまり「舞台化」に抵抗がないのは基本原作のおたくではないからということも大きく関係してると思います。

ここ最近、「誰を観に行くの?」の答えは決まって若手俳優の推しや好きな俳優さんだったので、"キャラクター"を観に行くのって、それこそはじめてテニミュを観に行ったとき以来かもしれなくて。平面の世界でみていたはずのものが、目の前で立体として動き、感じ、生きている。はじめてテニミュをみたときのあのふわふわとした不思議な感覚を、わたしはきっと一生忘れられない。

だからこそ、久々に"キャラクター"を目的として劇場に足を運ぶことが新鮮で、単純にすっごくどきどきして、はやく会いたくて、遠足の前日の小学生のような気持ちで初日を迎えました。


心が震える。
緊張も不安も興奮も全部飲み込んで、胸の中のつぼみがほころぶような気がする。
笑いだしたいくらいわくわくしてくる。

原作のアバンのシーン、咲也くんのモノローグで幕は開けました。
わたしも、あのとき彼とおんなじ気持ちだった。
心臓がぎゅっとなって、どうしようもなく泣きそうになって、たまらなく幸せで。


休憩時間を除いてたった2時間20分という限られた時間で春組と夏組のストーリーをやるなんて一体どこをどうするの……!?とざわざわしていた気持ちもありましたが、それを完全に吹き飛ばしてくれたのが、あの劇中劇です。

A3!はざっくり説明すると主人公(プレイヤー)が劇団の総監督になり、劇団員を集めて公演をやって借金完済を目指すというお話なので、もちろん出てくるキャラクターは「劇団員」になりますし、ストーリー上彼らが「演劇」をやることになります。
要は、エーステにおいて俳優さんたちが演じるのは「劇団員」で、「劇団員」として「演劇」をしなくてはならないのです。普段、役を演じるお仕事をしている人が「役を演じる役」を演じるという少しめずらしくて複雑な多重構造は、一幕終わりの劇中劇、新生春組旗揚げ公演『ロミオとジュリアス』を観終わったときにすとんと胸に落ちました。


ここで突然別作品の話をするのですが、エーステを手掛けているネルケプランニングは「アイドルステージ」というオリジナルの舞台作品シリーズを上演しています。このアイドルステージ、通称「ドルステ」は世界観がかなり特殊なのですが、わたしはエーステを観て、ドルステみたいだなあと感じて。というのも、ドルステもエーステのような多重構造が存在しています。

先に述べたようにこのコンテンツにはアナザーワールドと呼ばれている特殊な世界観があって、それを壊すのはよろしくないことだということは重々承知しているけれど、説明のためにアナザーワールドを一旦離れます。
このアナザーワールドとは「ドルステに登場するアイドルたちが存在する世界」のことです。いわゆるパラレルワールド。掘り下げるとものすごく長くなりそうなのでざっくりとした説明で留めておきますが、ドルステは第1部がお芝居、第2部がライブという二部構成の形を取っていて、1部ではアイドルたちがライブをするに至るまでの舞台裏を描き、2部では実際にライブを行います。ここで登場するアイドルは、当然ながら俳優さんによって「演じられたアイドル」に過ぎません。でもアナザーワールドでは「アイドルを演じる俳優」と「俳優によって演じられたアイドル」はまったくの別人として同じ世界線に存在すると考えます。たぶん実際に体験しないとこの辺の感覚っていまいちわからないんですよね、わたしも文章書いててよくわかりません。(文章力の問題)

わたしがはじめてドルステに触れたのは、2014年11月にネルケプランニング20周年を記念して開催された『ネルフェス2014』でした。そこで観たときはほぼ知識皆無の状態だったので「なんかめっちゃ出演者多いな……」くらいの感想しか抱かなかったんですが(良ければネルフェスの出演者調べてみてください)、そのあといろいろあって2015年1月、『CHaCK-UP ~ねらわれた惑星~』という公演を観に行きました。「ドルステ」というコンテンツをはじめてきちんと享受できたのはこのときです。

この公演、実はある問題を抱えていました。
水星人☆ミミタ役の本田礼生さんが2015年2月から始まるテニミュへの出演が決まっていて、CHaCK-UPの公演に出演できないということです。

現実的に考えれば「本田礼生=ミミタ」だけど、「本田礼生≠ミミタ」と考えるアナザーワールドにおいて、彼が他の仕事のために公演に出られないという理屈は通らないんです。また、ドルステはこの特殊な世界観のために、ミミタ役を他の俳優さんにするなどといったアイドルを演じる役者の代替は基本的にできなくなっています。(後のドルステにおいて、それが可能になったパターンも出てくるのですが……)

CHaCK-UPというアイドルグループは他のドルステのアイドルと比べてもまた少し特殊で、第1部の芝居パートで登場するのは芸能科に所属する高校生たちで、彼らがCHaCK-UPという"宇宙人"のアイドルを演じています。たとえば、俳優・本田礼生さんが演じる高校生・美波旅生が、アイドル・水星人☆ミミタを演じている、という構造になっています。

さて、本田礼生さんが出られないことをこの公演でどう落とし込んだのか。
答えは、芝居パートにおいては「美波はダンス留学で海外に行った」ため、ライブパートにおいては「ミミタはスリープモード(※地球人の睡眠にあたる期間で、水星人のスリープモードは長い)に入った」ためと、それぞれの不在の理由が用意されていました。
この公演を観たとき、単純に、すごいと思いました。こうしてひとつひとつに理由を与えてくれるお話が綺麗で、優しくて。

実はこの公演、脚本・演出を手掛けているのはエーステの脚本と同じ亀田真二郎さんです。
すでにお察しかもしれませんが、このCHaCK-UPにおける「俳優が演じる役がアイドルを演じる」という構造は、「俳優が演じる役が役を演じる」エーステと似通っています。


こういう構造の作品って、最初に「舞台裏」を見せられているんです。
ドルステの場合、最初は「アイドルたちがライブに至るまでの舞台裏」を見せられて、そこでの苦悩や葛藤、仲間と切磋琢磨する姿を知らないうちに享受する。だからライブパートになったとき、彼らから「チャーム」という役割を与えられたわたしたちは自然と彼らを応援してしまう。
エーステだって同じことで、最初「みんなが劇団に入ってきて公演に向けて稽古をする」のを見ていく中で、演技が上達しない人や劇団を辞めようとする人たちの葛藤だったり、仲間と衝突して、いつしかお互いのことをわかりあってひとつにまとまっていく姿を目撃することになる。その上で「公演の本番」を観劇してしまえば、客席に座るわたしたちはこれまで彼らと向き合って支えてきた監督であり、またMANKAIカンパニーの公演に足を運んだ観客足り得るのです。
公式から役を与えられてるんだよ、わたしたち。すごくない?エーステにおいて、わたしたち観客だってただ舞台を観にきた観客には留まらず、この舞台に参加することを許されている。わたしたちだって「監督」や「観客」という役を演じているんです。

エーステで監督の存在が概念になっているのは、もちろんわたしたちこそが監督!っていうのもあるんですけど、何よりもわたしたち観客がよりリアルなものとして彼らの成長を見守れるようにかな、と思います。

そもそもA3!って乙女ゲーム(という表現が正しいのか微妙ですが)なんですよね。個人的に「立花いづみ」という人間が完全に独立したものになっているのと、物心ついたときから夢女極めてるせいで「わたし=監督」の感覚ってほとんどなかったので、エーステを観てはっとしました。


ドルステの公演ページのQ&Aで、アイドルステージの世界観について「大人のごっこ遊び」という表現をしているんですけれど、これがすごくすきなんです。
エーステの千秋楽演出も、賛否両論あるみたいですがわたしからしたらA3!というコンテンツの舞台化に携わる大人の本気のお遊びのようで、どきどきしてたまらない。

わたしはテニミュ生まれテニミュ育ちなので、エーステの前アナ・後アナやカーテンコールの挨拶が「○○役の△△です」ではなく、たとえば「佐久間咲也です!」とか「皇天馬です」といった、あくまでキャラクターとしてのものであることにすごくどきどきします。
テニミュはコンテンツ自体がメジャーなものに近づいていくなかで、キャスト自身のパーソナルな部分も少し前に出しているよね。それはそれでもちろん好きなんだけど、「A3!の舞台化」って誰をメインターゲットにしてるのかなって考えたときに、俳優ファンよりも原作ファンな気がします。


舞台でやることの意味のひとつとして挙げられるのが、ゲームの画面では汲み取れなかった部分が可視化されるということだと思っていて。
皇天馬という天才役者の舞台に対するトラウマは、わたしがゲームで「克服のSUMMER!」という物語に触れたときに感じたものよりも、ずっとずっと重かった。あまりにもひとりの人間として弱くて、脆くて、儚いなあって。

皇天馬くんのことはもともと好きなんですけど、エーステ観てからもっと好きになってしまった。WOWOWで放送したエーステ初日の映像、Watar me!が始まる前の皇天馬くんのアップがこの世のものとは思えないくらいきれいなので皆さん見てください、ぜったいに約束ですよ


さて、最後にわたしの好きなひとの話をちょっとだけします。
突然ですが「キャラクター」ってなんだろう、って考えたとき、わたしは「人間」だと思っています。

かの松田誠さん(知らないひとは調べてください)がその昔に「キャラクターだって漫画の中にたまたま描かれているだけで、ご飯も食べるしトイレにも行くし電車にも乗る。PASMOも落としちゃうかもしれない」って言ってた。意訳なので実際言ってたのとはちょっと違うかもしれないけど、わたしびっくりしてしまって。

たまたま次元が違っただけで彼らも同じ人間なのでは?って考え、結構腑に落ちてしまったというか、わたしたちにとって救いのような、すてきなことだなって思うんです。

あと先日、A3!のプロデューサーの沖田多久磨さんがクリエイター向けのセミナーで「A3!では“キャラクターの人生を見せる”という意識を持っている」ってお話をされていたそうですごく興味深いな~~って思いました。


三好一成という人間が、わたしが生きているこの世界に存在しないことだって、残念ながらわたしは知っています。わかっています。

でも、だから何なんだって話なんですよ。
わかっているけれどわたしは今日も三好一成という存在を信じ続けるし、否、信じるふりをするし、それこそ"キャラクターの生の肯定"だとも思っています。

現実って結構厳しいけれどなるべく楽しく生きたいよね。
わたしは(もともと辞めるつもりだったんだけど)エーステ凱旋全通したすぎて会社辞めちゃった!後悔は全くしてません!ただそろそろ働かないとなって思ってます!

だいすきなひとにはもしかしたら今しか会えないかもしれないので、後悔しないように全力で生きたいですね。わたしは今でも2014年、さいたまスーパーアリーナのステージ上から去っていくだいすきだった人の背中が忘れられないんです。我ながら重くてわらっちゃうな。(興味があったらドリライ2014を見てください)
せっかく相手もわたしも今を生きているなら会わない手はないですよ。ぜったいに。

いよいよ春夏凱旋公演が始まりますね。
明日からもまたみんなが満開に咲けますように!劇場で会おうね!